岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
Okayama University Graduate School of Medicine, Dentistry and Pharmaceutical Sciences 2014
事業概要 (Profile) 研究配分(Charge) 研究成果(Outcome) 国際シンポジウム(Symposium)

 

事業概要

業概要

事業名

分子イメージング・マイクロドーズ(第0相)臨床試験体制を擁する分子標的治療研究・教育拠点の構築−(独)理化学研究所との連携による教育研究基盤の確立−

実施団体

岡山大学
(大学院医歯薬学総合研究科,大学院保健学研究科,大学院自然科学研究科,大学院環境生命科学研究科)
独立行政法人理化学研究所

概要

これまでのがんや高度移植再生医療,自己免疫疾患,難治性感染症に関する基盤研究成果を, 岡山大学と理化学研究所の分子イメージングに関する強固な教育研究基盤に結びつけ, 基盤研究からマイクロドーズ(第0相)臨床試験体制を擁する分子標的治療に係わるアジア屈指の指導的な教育研究拠点を確立する。



事業計画

目的

岡山大学や理研CMISに設置された分子イメージング関連設備, 理化学研究所との分子イメージングに関する連携大学院コースを基盤に, 本格的マイクロドーズ臨床試験体制を擁する国内有数の分子イメージング教育研究拠点を確立する。

これにより,がんや移植再生医療,自己免疫疾患,難治性感染症等に関する 研究成果を分子標的治療に結びつける創薬シーズ研究・教育拠点として機能させる。



必要性

分子イメージング技術が創薬や臨床試験に与えるインパクトは計り知れないため, 先進諸外国は元よりアジア諸国でも,分子イメージング技術を用いた臨床試験の開発競争が繰り広げられている。 特に,アジアにおいては,本邦が中国や韓国等により猛追される状況にあり,国家的な対応が必要である。

ところが,我が国では,分子イメージング技術は未だ基盤研究の域を出ず,その有用性が早くから指摘されてきたマイクロドーズ臨床試験の実施はやっと緒についたばかりである。 したがって,有望な創薬シーズを確保している国内の製薬企業は,臨床試験体制が整っている海外にその活路を求めて移動し始めており, 本邦の創薬やバイオ研究における研究開発力の地盤沈下や空洞化が生じている。もしもこのタイミングを逃せば,国内の長期的な教育研究環境の悪化のみならず, 産業界を含めた経済活動の長期的な低迷を引き起こしかねない。

本事業では,小動物から大動物,さらには本格的なマイクロドーズ(第0相)臨床試験体制を整備し, がんや移植再生医療,自己免疫疾患,難治性感染症等に関する一気通貫一体型分子イメージング教育・ 研究拠点を整備することによって,アジア屈指の指導的な分子標的治療技術開発拠点となる。



計画

前半では,現有のPET/CT実験等の動物実験施設を用いて,学内のシーズである新規がん抑制遺伝子REICを用いたがんの遺伝子治療,動脈硬化の分子標的化治療,心筋幹細胞を用いた細胞移植治療の効果をモニターする分子イメージング技術等をまずモデル研究として推進する。

また,分子イメージング・分子標的治療の拠点として学内に有望な研究シーズを公募し,共同研究を行う。 後半では,これらに加えて国立がんセンターや神戸先端医療センターを岡山大学病院や岡山画像診断センターと結び,マイクロドーズ臨床試験協力者会議(仮称)の実施体制を整える。また,岡山分子イメージング国際会議(仮称)を企画し,本邦の分子イメージング研究の国際的な認知度を向上させるとともに,アジア諸外国に向けた研究者の派遣や招聘を通して国際的なネットワーク作りを行う。

平成26年度以降の具体的な年度別実施計画

【平成26年度】
@公募研究のサポートを継続
A平成25年度に選定した公募研究に対し,進捗状況を再評価し,研究Phaseを変   更するかどうかを決定する
B分子イメージングに関する国際シンポジウムを開催する
C本事業の外部評価期間としての国際評価委員会を設立する
D第0相臨床試験準備会発足(倫理委員会申請)
 
【平成27年度】
@公募研究のサポートを継続
A平成25年度に選定した公募研究に対し,進捗状況を再評価し,研究Phaseを変   更するかどうかを決定する
Bがんや移植医療,再生医療の治療効果判定に向けた応用研究
C総括シンポジウム開催
D外部評価
 
【平成28年度以降】
 該当なし




内容

岡山大学鹿田地区医療系キャンパスでは,2006年度科学技術振興調整費 「ナノバイオ標的医療の融合的創出拠点の形成事業」,2009年度地域産学官共同研究拠点整備事業「おかやまメディカルイノベーションセンター(OMIC)」,2010年度分子イメージング研究戦略推進プログラム「岡山分子イメージング高度専門人材育成事業(岡山大学と理化学研究所の分子イメージング連携大学院コース)」 等により,がんの遺伝子治療,動脈硬化の抗体医療,心筋幹細胞の移植再生治療等の分子標的・細胞移植治療の開発,分子イメージング教育研究体制整備を強力に推進してきた。

本申請では,これら基盤事業で可能となった分子標的・細胞移植治療を分子イメージング技術と融合させる。そのために,本邦でも十分な稼働実績がない,動物実験から,岡山大学病院や岡山画像診断センターとタイアップしたヒト患者でのマイクロドーズ臨床試験を稼働させ,一気通貫一体型分子イメージング教育・研究拠点を構築する。ヒトにおける第0相を加えることにより,創薬候補の効率的な選定が可能となり,本邦の創薬における国際競争力を劇的に向上させる。 また,理化学研究所と近隣の岡山大学がタイアップすることにより, 理化学研究所に欠けている臨床試験能力を岡山大学が補完することができ, 効率的な拠点形成が可能となる。




効果

今後のがん治療や脳梗塞,認知症,神経変性疾患,臓器の退行性変化, さらにはその再生療法に関わる創薬等の研究を国家的規模で加速する研究者や技術者の養成が可能となる。

さらには,我が国や東アジアの大学等が所有する有望なシーズの臨床試験がより自由に実施可能となり,国際競争力が劇的に増す。また,トランスレーショナル研究としての大学病院を利用したマイクロドーズ臨床試験が可能な教育研究拠点として,全国でも有数の施設となる。




新規性

岡山と神戸という地の利を活かし,総合大学である岡山大学の医療系大学院や理工系大学院の多様で優秀な人的資源に,理化学研究所の基礎研究力を合わせて,分子イメージングに関する一大教育研究拠点を形成する。

特に,岡山大学がこれまで蓄積してきた研究シーズ,すなわち,がん治療や脳梗塞,認知症,神経変性疾患,臓器の退行性変化,さらにはその再生療法に対する分子標的治療,遺伝子治療,移植・再生医療技術などをモニターし得るような世界レベルの分子イメージング・分子標的治療研究・教育拠点を目指す。 加えて,岡山大学が近年力を入れて開発を進めている分子標的化DDS(ドラッグデリバリーシステム)技術を,分子イメージング技術に組み合わせ,診断しながら治す標的化医療(Theranostics)の開発を進める。特に,新規がん抑制遺伝子REICを用いたがんの遺伝子治療,動脈硬化の分子標的化治療,心臓内幹細胞を用いた細胞移植治療の効果を モニターする複数分子同時イメージング技術等を先行シーズとして優先的に開発する。

さらに,中四国随一の規模と手術数を誇る岡山大学病院と,分子イメージング技術の基盤研究で国際的な業績を上げている理研CMISが,両組織の相補的な連携・協力によって,基礎研究からトランスレーショナル研究,岡山大学病院や岡山画像診断センターを利用したマイクロドーズ臨床試験までをストレスなく実施可能とする教育研究拠点を形成する。 この際,岡山大学が得意とする蛍光イメージングや将来的にマイクロドーズ臨床試験を強くサポートすることにより,理研CMISを研究面でも相補的に強く補完できる。 また,本邦のこれまでの分子イメージング拠点は,ある特定の企業と強く結びついて運営される場合が多かった。

特定企業と結びついて運用された場合,創薬開発という性質上,広く研究成果を開示することは難しく,国立大学に設置された教育研究拠点としてうまくなじまない場合もあった。 岡山県や岡山大学のOMIC事業では,このような一企業独占ではなく,複数の国内有力企業や学内外の大学発の研究をサポートするインキュベーション部門が整備され, 国立大学にふさわしく競争的環境を損なわない拠点化の準備が整っている。

地域産学官共同研究拠点整備事業により医歯薬学総合研究科がある鹿田地区(医療系キャンパス)に整備されたOMICは,同地区にある自然生命科学研究支援センター(光・放射線情報解析部門)の放射線管理区域に設置され,そのうち,インキュベーション部門は同研究科の総合教育研究棟に設置され,使用者に開放されている。したがって,これまでOMIC設置のために準備されてきた分子イメージングや分子生物学研究機器を本プロジェクトでもそのまま活用することが可能である。



事業展開

展望

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科と岡山大学病院は,中四国地区で唯一,文部科学省のがんプロフェッショナル養成基盤推進プランと厚生労働省の臨床研究中核病院整備事業の採択を得た一大医療教育研究拠点となった。この結果,本事業は「日本再興戦略」の「国民の健康寿命の延伸」のテーマにも掲げている日本発の革新的な医薬品・医療機器の創出等を目的とした国際水準の臨床研究,難病等の医師主導治験及び市販後臨床研究等の中心的役割を担うことになった。

そのため,新規医薬品の効率的な開発と臨床治験を進め,国際競争力を強化するためにも欠かせない第0相臨床治験に位置づけられるマイクロドーズ臨床試験を担う,本事業の果たす役割はますます大きくなった。

また,新規抗がん剤の有効性や悪性腫瘍の予後を科学的に評価するためには,PET/CTなど分子イメージング技術は不可欠であり,地域産学官共同研究拠点事業で整備されたOMIC施設に加え,岡山大学病院がヒト用のPET/CT装置を導入し,マイクロドーズ臨床試験に向けて基盤整備を行うことは,教育再生実行会議で示された大学のイノベーション力・イノベーション教育力・研究力強化のための方策と完全に合致するところである。

さらに本事業は,本学の総合大学院制という特長を生かした学際・融合的な教育研究の推進という本学の機能強化に大きく寄与し,岡山大学と理化学研究所が連携を取り合って分子イメージングの拠点化を進めることで,国家戦略的にも国際的医療教育研究重点大学として世界的な注目を集めることになる。



今後

国内における総合大学と理化学研究所との連携プロジェクトであり,規模が大きく,少人数の研究者の独創的研究を対象としている科学研究費補助金では対応ができない。 また,アジア屈指の分子イメージング教育研究拠点整備という意味から,国策としての取り組みが欠かせない。 本研究プロジェクトでは,基盤研究で生まれたシーズを,分子イメージングに応用し,分子イメージングが実施できる方策を動物実験等で開発する。

動物実験でうまくいった方策を,ヒトでマイクロドーズ臨床試験に持ち込み最適化する。 この一連の流れは,これまでの分子生物学的な研究開発力と新しい分子イメージング技術を融合することによって可能となる。 また,本邦ではマイクロドーズ臨床試験を実施している組織は非常に限られており,その方法論も緒に就いたばかりで研究段階である。

したがって,本取組は単なるトランスレーショナル研究のプロジェクトではなく,将来の本邦の医療を抜本的に変革するための基盤教育研究プロジェクトと捉えられる。 本事業には,これまで国策として巨額の経費が費やされており,その有効利用のためにも,永続性を持って対応する必要がある。 本事業により基盤整備がなされれば,大学内の戦略的機構改革による人的配置の効率化や学内インセンティブ経費等の配分により,本事業の継続は十分可能と考えられる。



岡山大学大学院医歯薬学総合研究科

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